俺が大学生だった昭和40年代、若い奴らはみんなアメリカに憧れていた。
映画や音楽、ファッション、髪型、何でもアメリカから発信された物を追っていたもんだ。
ザ・ベンチャーズ、ボブ・ディラン、ジミ・ヘンドリクス、サーモン&ガーファンクル、ザ・ドアーズとかたくさん凄いミュージシャンがいたなあ。
あの頃のアメリカの音楽は良かった。今、日本のアーティストって呼ばれる奴らみたいに、なよなよしていない。筋が通っていた。
映画も西部劇が全盛でスカッとしていて、男らしい作品が多かった。ウエストサイド物語は特に影響受けたなあー
そんな憧れのアメリカは当時はまだまだ遠い国。普通の若者が気軽に旅行に行ける場所ではなかった。
その代わりに行ったのが米軍基地のある町だった。横須賀に行って、初めて生のアメリカ人を見た。
そして、そこにあるレストランに入って、こちらも初めて出会ったのがランチョンミートだった。ひき肉を香辛料で味付けした缶詰で、SPAMが一番有名だよな。
(今はゴーヤチャンプルーやポーク玉子とかの沖縄料理に使われてポピュラーだけど、当時はそんな目にする物じゃなかった。)
ランチョンミートを厚切りにしてフライパンで焼いた物を、横須賀で食べた時、「俺、アメリカに近づいた〜」と感じた。そして、アメリカの兵隊の胃袋に合わせたそのボリュームに驚いた。若い時だったが食べ切るのに少し苦労して、「奴らはすげえなあ」とやっぱり尊敬の念を覚えた。
あれから数十年、まさかタイのバンコクでまた出会うとは思わなかった。
久しぶりにAGEHAに来て、腹が空いていたから食事メニューをチェックをしててみつけたのが「沖縄ランチョンミート焼き」。これ前からあったっけ?懐かしくなって、思わず注文した。
出てきたランチョンミート焼き。これこれ、こういう風に厚切りなのが良いよなあ。これぞ、アメリカ式。フライパンで良く焼かれて、脂が溶けて旨い。このジャンクな感じもアメリカ風で堪らない。
これはビールが進む進む、すぐにもう一杯頼んだ。
今日指名した女の子が、「これ何?」と聞いてくるので、英語でこれはアメリカの肉の缶詰を使っていて、よくアメリカの家庭では食べるんだという事を説明した。
彼女はおそるおそる一口食べたけど、「おいしい」とスマイル。濃いしっかりした味付けだからタイ人にもウケると思うよ。
また、アメリカを感じたくなったら、AGEHAに来て、ランチョンミート焼きを注文し、当時を思い出すことにしようか。